平家物語 祇王は悲劇の女性か
私が平家物語に惹かれるのは、平家にスポットライトを当てつつ、たくさんの登場人物による群像劇でもあるからだと思う。
その中で、描かれ方が画一的な分、想像の余地も大きい女性たちに注目してみたい。
今回は祇王と仏御前について、主に経済的視点(?)から考えてみたい。
祇王の物語は『平家物語』の序盤、個人的にはかなり唐突に始まる。
平清盛は好色なだけでなく残酷な人物ですよ〜という趣旨だと思うが・・・
もう少し具体的に書くと
白拍子とは当時の最先端の芸能で、祇王は白拍子のトップスターだったが、それゆえ清盛の目に留まり、屋敷に囲われる。
数年は寵愛を受けるが、仏御前という新人の出現であっさり捨てられ、屋敷も追い出されてしまう。
それだけでも十分ひどいが、追い打ちをかけるように「仏御前が退屈しているから慰めに来い」と呼びつけられ、下座に置かれる等の仕打ちを受ける。
心底傷付いた祇王は、母・妹と共に出家。
しばらく後、祇王一家を訪ねる者が・・・髪を下ろした仏御前だった。
(仏御前もまた清盛に捨てられた、というわけではなく、仏自身が清盛を見限って逃げ出してきたのだが。)
という感じ。
話を聞くと、祇王も仏御前もかわいそう😭なのだが、頭の隅で常に人生すごろくの上がりを探す私は、
祇王も仏御前も結構いい感じの上がりじゃね?
とも思ってしまった。
出家して4人仲良く念仏を唱えて、無事に往生の本懐を遂げました、めでたしめでたし👏
でもさ、念仏を唱えても空腹は満たせないじゃない?
冬は火も使うだろうし、炭は? お風呂は? 着るものは?
出家すれば自動的にそれらを誰かが調達してくれるわけじゃないよね?
ということで、もう一度よく読むと
・祇王は3年間清盛から寵愛を受けた
・その間、毎月百石の米と百貫の銭が贈られた とある。
百石の米と百貫の銭がどれほどかを調べてみると、こんなサイトが見つかった。
こちらによると、大雑把に言って
1石=1貫
1貫=24,000円
という事で、
100石+100貫=200貫
200貫=480万円/月
これが3年だから 480万円✖️36月で1億7280万円‼️
なかなかの額だ。
ピケティ先生を参考に、このうちの例えば1億5000万円で荘園を買って毎年5%の利益を得られるとしたら、年収750万。
母娘3人で十分に暮らして行ける。
これに仏御前が5000万円プラスしたら、4人で年収1000万円。
それなら往生の本懐を遂げる経済基盤がはっきりして、私としては大いに納得がいく。
・・・・・穿った見方になるけど、本当に祇王は清盛に捨てられたのかな?
祇王が計画的に仏御前を清盛に引き合わせて、自分を捨てるように仕向けてない?・・・と思って平家物語の祇王の章を読むと、そう見えてくる。
いきなり営業をかけてきた仏御前を、清盛は追い返そうとしたのに、祇王がどこか強引に迎え入れて芸能を披露させ、結果、自分は捨てられる。
その後の仏の退屈を慰める、というのも事前に仏御前とそのように打ち合わせていて、世間が
「そんなひどい目にあったら、そりゃあ出家しちゃいますよね」と納得する仕掛けとも取れる。
現代の女性アイドルグループではメンバーが「卒業」していくように、平安時代も白拍子として売れっ子の時間はそんなに長くないのかもしれないし、そもそも儲かる商売なのだろうか。
ならば大金持ちにスポンサーになってもらってある程度の蓄財ができたら引退してのんびりと余生を送る、というのはそんなに悪い話じゃない。
むしろトップアイドルだからこそ可能な夢のアーリーリタイアではないのか。
平家物語自体が実話を元にしたフィクション、中でも祇王の物語は祇王だ仏御前だと名前からして完全に作り話だろうと思われる。
その全面フィクションの一番最後
「長講堂の過去帳に4人が同じ所に記された」で終わる。
長講堂だって、長講堂!
聴衆に「もしかして、あの?」って思わせてない?
長講堂領は八条院領と共に中世日本を代表する大荘園群。
長講堂領は後白河法皇から丹後局との間の娘に相続されるのだが、母である丹後局はこの娘の莫大な資産を背景にして政治的に大きな発言力を持っていたわけで。
私が祇王は清盛からもらった財産で荘園を買ったのかな〜と思ったのは、まさにこの長講堂の文字を見たから。
違うかな?
違うんだろうな〜
でも、いい。
そんなこんなを考えるのが平家物語の楽しみだから❤️