ロシアのウクライナ侵攻と孔明の北伐
諸葛孔明ほど優秀な人なら、普通に考えて魏には勝てないし、だからこその「天下三分の計」だったわけで、度重なる北伐は自殺行為だと分かっていただろう。
だから、私はずっと北伐が謎だった。
いずれ魏が攻めてきたとしても、北伐なんかしないで国力を高めていれば蜀はもっと存続したし、魏は政変が起こったりするのだから、何がどう転んだかわからない。
今回のロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにして
戦いを始めると、完敗するか闘う相手がいなくなるまで終われないのかな、と思った。
日本は先の大戦で完膚なきまでに叩きのめされて戦う事をやめたが、日本を叩きのめしたアメリカは戦場を朝鮮半島に移し、更にベトナム戦争にも乗り出し、そこで負けてようやく勢いは止まったが、それでもずっと戦い続けている。
ロシアが戦争をやめない理由の何割かは、独裁体制と完敗していないからではないかと思えて仕方がない。
孔明は魏に戦いを挑む北伐の前に、蜀の内側を固めるための南征を行なっている。
敵将の孟獲を7回捕らえて7回解放したという「七縦七擒」が有名で、力を見せつけて心服させたとか、孔明の懐の深さを示すとか言われるけど、私は北伐をできるだけ先に引き伸ばすために、戦力で圧倒する相手をわざと逃して、南征を長引かせて時間を稼ぎたかったんじゃないかと疑っている。
しかし孔明の予想…じゃなくて私の憶測に反して南征はそんなに長引かなかったばかりか、弱い相手に何度も勝つことで結果的に成功体験を重ねることになり、その成功体験が逆に蜀の国民を度重なる北伐へと勢いづかせてしまったのではなかったか。
北伐は避けられないとして、三国の中で最弱の蜀が最強の魏に対し勝機があるとしたら最初の一戦、と孔明は考えたに違いない。
魏の内部に寝返りを画策し、囮を立てて2方面からの進撃という北伐の中で最も凝った作戦は、これでダメなら魏には勝てないと観念する覚悟で練りに練ったことだろう。
第一次北伐は、それでも負けてしまうわけだが・・・
仮に馬謖が山に布陣しなくても最終的には勝てなかっただろう。
それでも敗戦の責任は誰かが取らねばならず、孔明自身が死ぬわけにはいかず、泣いて馬謖を斬るしかなかったのかもしれない。
北伐は断念して蜀の内政に努め、天下三分の計をより強固なものにしたらよかったと無責任な後世の人間は考えたりする訳だが。
しかし北伐は続く。
孔明を失ってなお止まることはなく、そうなるともう誰か単体の意志などではない誰にも止められない大きな力が働いているようにさえ思えてくる。
ウクライナ侵攻はいつどのように決着するのだろう。
仮にプーチン大統領に何かあったとして、それで侵攻は止まるのか。
西側諸国はロシアを徹底的に敗北させることができるだろうか。